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第十話 戦うウェイトレスさん


 曇った灰色の空から落ちる雨音に混じって、巨大な鋼鉄の塊がぶつかり合う音が、辺りにこだまする。
 それと共に森の木々が無理矢理倒される、不気味な音が聞こえて来た。
 その音と共にこの森の中から、身長十五メートルはあろうかという、鉄で作られた巨人が姿を現した。
 龍機兵だ。二体いる。
 その二機の巨人の足元には、この巨体を通過させる為に犠牲となった大木が無残に転がっていた。
 自分達がズタズタにしたばかりのこの森の近くにある、湖畔の宿場町に頭部を向けた。
 中の操士が口を開く。
「……この森にはもう居ませんな……やはりあの街に……?」
 隣に立つもう一機の龍機兵に、そう促がす。
 いや、良く見るとその龍機兵の装甲表面には幾つもの呪文の紋様が刻み込まれていた。巨大な両肩に眼を向ければ、大きな歯車や何本もの動力パイプが取り付けられている。
 この機体は只の龍機兵ではない。魔導器を満載した魔法使い専用の龍機兵、「呪導機」だ。
 その呪導機の操舞倉に乗る魔導士は、座席手前に設えられた感応器を一つの眼で見つめている。
 片目が無い。失った方の片目には機械仕掛けのまがい物の瞳がつけられていた。左眼の義眼の硝子のレンズが妖しく光る。
 先程から感応器の光点が目の前の湖畔の港街から動いていない。目標は確実に目の前の宿場街にいる。
 魔導士が顔を上げた。
「……やはりこれは、強引な手段をとらねばならんか」
 魔導士が自分の意志を決めたように操縦桿を握った。
 良く見るとその魔導士の座る操士席の傍らには、一振りのグレートソードソードが立てかけられている。
 気が付くと龍機兵達に当たる雨音が少しずつ弱まり始めていた。










「ふん、ふん、ふ〜ん〜」
 美しく碧く澄んだ湖のほとりにある小さな港街。
 その湖に面した通りの角にある小さなレストランを切り盛りするオーガの女将は、楽しげに鼻歌などを歌いながら、客の食べ終わった食器の荒い物をしていた。
 その時唐突に、レストランの厨房に直接通じる、裏戸が空けられた。
 こんな場所から入ってこようとする者がいるとするならば、先程お使いに出した二人のホビットの姉妹のどちらかが帰って来たに違いない。
 女将が振り向くと、背の高いお姉ちゃんの方が、ミニスカートの裾をひらひら揺らしながら入ってきた。
 手には雨の雫を滴り落す傘と、オリーブオイルのボトルの入ったトートバッグを持っている。その二つともどう言う訳か左手に一緒に持ち、空いた右手は自分の胸の辺りに添えていた。
「ただいま帰りましたー」
「お帰りなさぁい、リュウガちゃん」
 リュウガは傘をたたんで傘立てに置くと、女将の方に近付いて来た。
「……あ、あの女将さん……何か温かい物を作って頂けますか?」
 一寸申し訳なさそうな響きで呟いた。
「あれ? ごめんね、外そんなに寒かった?」
 この子がそんな頼み事をするとは珍しいなあ? と、女将が思っていると、
「……いえ、わたしじゃなくて……」
 リュウガが自分の胸に添えていた手を離した。
 すると中から背中に羽をはやした小さい女の子が、ぴょこっと顔を出した。
「ぷはぁ」
「あら、妖精さんじゃないの?」
 女将の瞳がぱっと大きくなって、リュウガの胸元を覗き込む。
「はい、この先の路地でこの子雨に濡れて随分寒そうにしてて……あの、とりあえずしばらくの間ここにこの子も置いてもらって良いですか? ……彼女、他に行く所も無いみたいですし……」
 リュウガがおずおずと切り出した。リュウガの服に入ってる妖精の方も一寸おずおずしている。
 その二人の妙に息の合ったかしこまる姿を見て、女将はくすくす笑いながら答えた。
「うん、お安い御用ヨ……それに、その子随分と濡れちゃって……早く部屋に行ってその子の体を暖めてあげなさい。それとリュウガちゃんもちゃんと新しい服に着替えないと風邪引いちゃうよ?」
 見ればリュウガの上着の胸の辺りがかなり濡れてしまっている。妖精の着る服やその羽を濡らしていた雨水が服に染み出していたからだ。その所為で中に着る白いブラジャーが少し透けて見えてしまっている程だ。
「ほら、何か体の温まるものすぐ作ってあげるから、はやく、はやく」
「はい、ありがとうございます!」
 リュウガが顔をほころばせる。
「……ありがとう……私、こんなに優しくしてもらって、嬉しいです」
 リュウガの胸の中の温かさでようやく体力の戻って来た妖精が、元気に感謝の言葉を口にした。





 窓から外を見ると昨日の夜から降り続いていた雨がようやく上がっていた。空の雲が少しずつ流れ始め、隙間から雨上がりの澄んだ青空が覗き始める。
 部屋の中では、テーブルの前に座ったリュウガが、なにやら作り物をしていた。細長い指を器用に使って針と糸を動かし、左手に持った綿で出来た白い布で縫い物をしていた。
 テーブルの上に目を移すと温かいコーンスープの入ったほかほかと湯気を上げるスープカップが置かれていて、その隣には同じくコーンスープの入れられた普段はコーヒーを飲む時に使う筈のミルクカップが置かれており、更にその隣には肩に掛けてもらったタオルに包まる下着姿の妖精の姿があった。
 部屋の窓の上の縁の所にはハンガーが釣ってあって、そこには先程まで妖精の女の子が着ていた服が洗濯バサミで固定され、干してあった。どうやらリュウガはこの服が乾くまでの変わりの服を作っているらしい。
 ちくちくとお裁縫に専念するリュウガの前で、妖精の女の子が自分の目の前に置かれた、ほかほか湯気を立てるミルクカップを前にして、少したじろいでいた。
 ミルクカップと言えばひとの親指ぐらいの大きさの大変小さな物なのではあるが、身長三十センチ程のこの妖精にしてみれば、それは普通の大きさの者で考えると結構大きめなバケツにでもスープを入れられたようなものである。
 一応女将さんも気をきかせてこのレストランにある一番小さな容器に入れてくれたのではあるが、やはりこの妖精の女の子にとってはかなりの大きさのようであります。
 それでも何とか御好意を無駄にしないようにと、カップを傾けて一生懸命に中に入ったコーンスープに口を付けている。
「良し、こんなもんですかね」
 妖精の女の子がコーンスープ相手に大格闘を演じている前で、一息付いたようにリュウガが声を上げた。
 リュウガが出来上がったばかりの妖精用の小さい服を広げる。白いワンピースだ。羽の邪魔にならないように背中を大きく開けたデザインになっている。
 時間を掛けないようにとあちこち省略して作ってはあるが、それでもかなり良く出来ている。
 リュウガはその長身ゆえ自分にあった服という物があまり無く、そのため自分で自分自身の服を作ったりもするので洋服作りは結構手馴れた物だったのだ。その腕前はこのような人形サイズの小さい物でも変わらないようである。
 リュウガが代わりの服が出来上がった事をテーブルの上の妖精の女の子に告げる。
「おまたせしましたぁ、出来ましたよー……あ、そう言えば?」
 リュウガはその時になって目の前にちょこんと座る妖精の女の子の名前を聞いていなかった事に気が付いた。
「……名前を聞いていなかったですね? わたしはリュウガって言います、あなたは?」
 妖精がリュウガの自己紹介に答えて、その小さい口を開く。
「……私、シルフィって言うの」
「? シルフィちゃんですか? 中々お似合いの可愛い名前ですネ」
「……ありがとう」
 何だか誉められたような気がして照れ笑いを浮かべるシルフィ。
「……ちょっと良いですか、シルフィちゃん?」
「あ、うん」
 リュウガはシルフィに出来た服を着てもらうため、テーブルの上に立ってもらった。肩に掛けたタオルを優しく外す。
 下着姿がリュウガの前に丸出しになってしまっても、それ程シルフィは恥ずかしそうにしていなかった。結構さばさばとした性格の女の子なのかもしれない。
 逆にリュウガの方が気を使って、出来たばかりの白いワンピースを、さっと前に出した。
「さっきあなたの身体のサイズを測らせてもらったから、多分大丈夫だとは思うんですけど……」
 シルフィが、背中が大きく開いたワンピースに袖を通し始めた。
 そのワンピースはノースリーブ系の作りで、首の後ろで肩紐を結ぶようになっていた。これは背中の羽を旨く外に逃がす為のデザインだ。そして、寒くないようにと一緒にアームウォーマーとニーソックスまで添えられていた。
 ワンピース、アームウォーマー、ニーソックスとも縫いしろがうまく身体に当たらないように作られていて、シルフィも着心地が良かった。しかもこの全てを大体半刻程で作ってしまったのだから、大した腕前である。
「……う〜ん?」
 だが、その姿を見たリュウガは少し不満げに首を傾げた。見ると、何だかお腹の辺りが少し横に余ってしまっている。多分大きく背中を開けた所為で、普通に洋服を作る時の感覚で出来ず、少し失敗してしまったのだろう。
「……あ」
 そう言いながら何かを思いついた様に、ぽんっ♪と両の手の平を胸の前で合わせた。
 リュウガは自分の顔の横の髪を縛っていた小さ目のリボンの片方を解くと、妖精の小さい腰に巻きつけた。
 そしてそのまま後ろで蝶結びに纏めると、妖精のワンピースの形を整えた。
「良し、これで大丈夫」
 出来上がった自分の姿を見回しながらシルフィが嬉しそうに口を開いた。
「ありがとうリュウガぁっ……エヘへ、こんなに可愛い服着たの、わたし初めてだヨォ」
 シルフィの天真爛漫な感謝の声を聞いて、リュウガも満足そうに優しく微笑む。
「いーえ、こんなささっと作ったものでも気に入ってもらえて、わたしも嬉しいです」
 リュウガがテーブルに腕を載せて、シルフィの小さい顔に自分の体を寄せるようにしながら口を開いた。
「……シルフィちゃん……でもどうしてあんな所にいたんですか? ……シルフィちゃん見たいな妖精のひとって普通は森の中に住んでいるんですよね……?」
「……それは……」
 シルフィが少し表情を曇らせながらこれまでの経緯を説明しようかと思ったその時、街の入り口辺りから物凄い音が聞こえて来た。
 リュウガが音のした方に振り向く。普段はぽよ〜んとしているが、こう言う時の状況の変化にはひと一倍敏感なリュウガは、その音の正体が何か大きな爆発音である事を感じていた。
「……?」
 リュウガが何かに気付いたように窓を開けると、外に半身を乗り出した。下の通りをエルフの男が大声で叫びながら走ってくるのが見えた。
「大変だ!! 人間の奴等がいきなり龍機兵に乗って、この街に攻め込んできやがった!!!」
 血相を変えて走るエルフの男が叫ぶ。
「奴らこの街に逃げ込んだ妖精を出せって言っている!! ひとの住む街に妖精なんかいないって言ってもあいつら全然聞きやがらねえ!!」
 その叫びを聞いたリュウガが後ろに振り向く。そこにはリュウガの事をじっと見つめて、小さい体を震わすシルフィの姿があった。
「……わたし……わたし……」
 小さく搾り出す声も、震えていた。
 その姿を見ながらリュウガは全てを理解した様に、優しく微笑んだ。
「なーんだ、そう言う理由だったんですネ。早く言って下さいヨ」
 リュウガはそれだけ言うと部屋の隅に置いてあった自分の鎧道具の中から手甲だけ取り出すと、素早く両腕に身に付けた。
 そして愛用の大剣を手に持つと、シルフィの側までやって来た。シルフィの頭にちょんっと人差し指を乗せると、優しく呟いた。
「大丈夫、悪い奴等はみんなやっつけて来ますから、シルフィちゃんはここでおとなしく待っていて下さいネ」
 そう言って部屋を出ようとしたリュウガは、お尻から生える尻尾を、急に何かに掴まれてしまった。
「?」
 見ればシルフィがその小さい腕をリュウガのふさふさとした柔らかい尻尾に回し、一生懸命掴んでいる。
「……これは、私のせいなんだもん……だから、私も、連れて行って……」





 胸部装甲に斧槍の直撃を受け、白と黒のモノトーンの龍機兵が轟音を立てながら地面に倒れた。
「どうしたぁ!! 早く出て来い、妖精ィ!! ……いや、Fデバイス! お前の所為でこの街がどうなっても良いのかぁ!!!」
 この街を守る自警団の龍機兵を、いとも容易く打ち倒した龍機兵から声が上がる。
 先程の二体の龍機兵がこの雨上がりの湖畔の宿場町で暴れていた。
 大剣を携えた魔導士……いや、片目の魔法剣士の乗る呪導機は最初に爆炎の魔法を使っただけで、それからは後方で動きを止めていた。その代わり僚機の龍機兵が破壊の限りを続けている。
 自警団機を手にかけた斧槍が、今度は湖畔の宿場街に建ち並ぶ民家に叩きつけられた。ついさっきまで家だったはずの物体が、残骸となって辺りに降りしきる。
 自警団の龍機兵が出動した時点で街の者達は安全な場所まで避難していたので、街の中は意外に静かだった。町並みを崩す破壊音だけが通り抜けていく。
 その龍機兵の暴れる機械音だけがこだまする中、一人静かに呪導機の操舞倉内で感応器の反応を待っていた魔法剣士は、目標を表す光点に反応があったのを確認した。こちらに近付いて来る。
 魔法剣士が顔を上げた。街を破壊して陽動を掛けていた僚機に指示を出す。
「目標を確認した。この通りの角だ。十二時の方向」
 龍機兵は破壊の手を止めてその方向に鋼鉄製の顔を向けた。
 人通りの無くなった街の中、そこには反りの付いたグレートソードらしき物を手に持った、背の高いディフュームの女が立っていた。ウェイトレスの格好をしている。レストランの店員か何かだろうか?
 頭には横に垂れた動物耳、腰には細長い尻尾が付いている。どうやらホビットの者らしい。だが、あんなにでかいホビットがいるのだろうか?
 が、そこまで考えを巡らす必要は、この龍機兵を駆る操士には無い。目標の確保が全てだ。
「あの、ホビットの女から反応が出ている。多分、身体のどこかに隠しているのだろう」
 魔法剣士の指示に従い、龍機兵が歩み出る。
「おい!! そこのでかい女ぁ!! お前が隠している妖精を早く差し出せぇ!! そうすればこの街の破壊ももうやめてやる!!!」
 随分と自分勝手な言い草だ。
 その声を聞きながら、リュウガは手に持つ愛用の大剣を抜き払った。鞘を投げ捨てる。鋼鉄製の鞘が音を立てて転がる。
 そしておもむろに剣を持つ右手の手甲に、左手の手甲の手首辺りの円形部分を叩きつけた。するとその行為が起動スイッチになっているのか、左腕の手甲に内蔵された円盤部が回転を始めた。
 リュウガは左腕を前に突き出すと回転を続ける円盤に、右手に持つ大剣の刃先を当てた。
 そしてそのまま、その回転する円盤に添って剣の刃先を走らせた。
 物凄い火花が飛び散る。そしてあろうことか大剣に炎が灯った。
 業火を吐き出し始めた大剣を、腕を交差させる様に、顔の横の辺りに構えた。
 その光景を驚愕と訝しさの混ざった目で見ていた龍機兵の操士が叫ぶ。
「……あ、あれは!?」
 突然、目の前からリュウガが姿を消した。
「!?」
 いや、正確にはあまりの高速移動に人間程度の動体視力では追いつけなかっただけだ。
 殆ど一足飛びで敵との差を一気に詰めたリュウガは、頭上で剣を旋回させる独特の動きでその赤熱した刃を龍機兵の脚に叩きつける。
 炎を纏った刃は、やすやすと龍機兵の脚部を切り裂いていた。片足を失った龍機兵が轟音を立てて地面に倒れ伏す。
 大地に崩れ落ちた龍機兵の眼球部が、自分の脚を切り裂いた背の高いホビットの剣士の姿を捉えた。その映像が操舞倉内の映像版に映し出される。
 そこに移ったリュウガの顔には何時もの優しげな微笑みは無かった。まるで人形の様に、感情をまったく感じ得ない顔になっている。
 地上最強を示す「龍位」の称号を持つ剣士としての顔だ。
 そしてその瞳はあきらかな殺気の光を帯びていた。
「……ひっ!」
 思わずその蒼い瞳と目が合ってしまった操士は恐怖で声を上げた。そしてその情けない悲鳴が、破壊の限りを尽くした龍機兵の操士の、最後の言葉になってしまった。
 リュウガが、くるっと体を回転させた。
 その動きはとてもしなやかで、まるで静かにワルツを踊っているかの様な優雅さを見せていた。
 それに合わせてリュウガの右手に持った大剣が、纏った炎の帯を空に煌めかせ宙を舞い踊る。
 自分の体を回転させ加速度を増した剣を、丁度目の前になっていた龍機兵の胴体部に叩き込んだ。
 しかもこの驚異的加速力に、手甲に付けられた魔導器によって付加された魔法炎の高熱による溶断力も加わっているのである。
 一閃された炎の刃は易々と胴体装甲部を切り裂いた。
 龍機兵が完全に大地に沈んだ。中に乗っていた操士は、リュウガの大剣が薙ぎ払われた時に発生した音速の刃によりズタズタに体を切り裂かれ、胴体部奥の操舞倉内で醜い骸をさらすはめになった。
 鋼鉄で出来た巨人をたったの二激で打ち倒したホビットの剣士が、怒りで染められた美しい顔を、残った呪導機に向ける。

「……これで、この街と自警団の龍機兵を壊した代償にしてあげます……そこの呪導機、大人しく引きなさい……」
 リュウガが剣先に付いた返り血を払うかのように剣を振り下げ、大剣に灯った炎を払いながら呟いた。
 その声は確かに何時もの可愛い声には違いなかったが、その響きはあたかも地獄の使者が死に逝く者を招き入れる声の様に聞こえた。
 中に乗る魔法剣士はその光景に驚きを隠せなかった。
 回転を基本とした剣の流派と言う物は殆ど存在しない。それは何故か?
 体を回転させる、その事により確かに剣に加速力が加わり、只振り抜くよりも切断力は確実に向上する。
 だが、それと同時に体を回転させるという事は、相手に自分の背を向けるという事になる。
 普通なら体が半回転し背を向けたとたん、相手から背中に必殺の刃を受けてしまうだろう。
 だが目の前に立つディフュームの女剣士は、その長身を身軽に旋回させ剣を振るった。最初に見せた頭上で旋回させる剣捌きも、非常にしなやかな流れを見せていた。
 敵の目の前で自分の背を向けるという事はその度胸の前に、相手の動きの流れを一瞬にして読み取り、先を読む力が必要となる。それは相当な実戦経験を積まなければ得られないものだ。
 それと同時にその剣と身体を高速で旋回させる高い敏捷力も必要となり、何よりも相手を切り裂く剛の腕力も必要になって来る。
 目の前のホビットの剣士はその全てを可能にしていた。
 そしてそんな事を可能にする事が出来る者など、数々の戦いを潜り抜けてきたこの魔法剣士の頭の中にも一人しかいなかった。
 何者をも切り裂く天下無双の剣……戦場を舞い踊る刃の輪舞……
 呪導機から声が漏れ出した。
「……その、剣の流れ……お前は……いや、お前が紅蓮の死神なのか!?」
 魔法剣士がリュウガにつけられた二つ名を口にした。
 戦場にリュウガの焔の剣が舞い踊る度に、確実に敵が打ち倒されていく。
 その紅蓮の焔に恐怖を抱いた敵兵から、リュウガはその様にあだ名されるようになった。
 そして何時の頃からか、帝国軍の者もリュウガの強さに畏怖の念を込めてそう呼ぶようになっていた。
 呪導機が間合いを取り直すかのように一歩身を引いた。
「……!?」 
 その一瞬出来た間で何かに気付いたか、リュウガが自分の胸の上に視線を落とした。
 部屋を出た時からずっと上着の中に入っていたシルフィが、目をぐるぐるに回して半分気を失いかけていた。
「わ!? だいじょうぶですか、シルフィちゃん!?」
 リュウガが凄まじい殺気を放ち続ける紅蓮の死神の顔から、何時ものぽよ〜んとした表情に戻った。
「……うーん、うーん……」
 一寸気持ち悪そうに、小さい顔を青くしている。
 考えてみれば、こうしてシルフィが目を回して顔を青くした乗り物酔いの状態になっているのは当たり前である。大剣を振るう為の凄まじいばかりの高速の動きを見せたリュウガの服の中に、先程からずっと入っていたのである。
 そう考えると乗り物酔いのような状態なのはまだマシなのかも知れない。これだけの高速機動なのだから、本当なら音速を出す戦闘機乗りが起こすブラックアウトに近い症状になっていてもおかしくない。
 リュウガの意外におっちょこちょいな部分が出てしまったようだ。
 そんなリュウガの心配の気持ちを打ち消すように呪導機が再び歩を進めて来た。
「!?」
「……確かにお前が生身の体でも平然と龍機兵を切り倒すあの紅蓮の死神だと言う事は解った……だが、その好意の退却の指示は聞けんな……こちらもおいそれと退ける立場でも無いのでな……」
 気が付けば既にその呪導機は、攻撃魔法の発動体制を整えていた。
 呪導機に騎乗する魔法剣士は突如として現れた紅蓮の死神の立ち捌きに驚きながらも、リュウガが僚機の龍機兵を切り裂いている時に既に攻撃呪文の詠唱を終えていたのだ。
 凄腕の剣士の前ではいかな高位魔導士でも無力に等しい。呪文の詠唱が終わる前に簡単に切り伏せられてしまう。魔法剣士は僚機を犠牲とする事で、目の前の地上最強の剣士と互角の立場に立つ事に成功していた。
 いかにも人間らしい卑怯かつ残酷な手だが、最初から僚機の龍機兵もそれを操る操士も、その程度の使い道しか無いと見ていたのかも知れない。
 半壊した宿場街の中心で呪導機と、大剣を構えたウェイトレスが対峙する。
「……どうしよう?」
 相手の動体視力を上回るスピードを発揮してその攻撃呪文をかわす事も可能だろう。
 だが自分がそれだけのスピードで動けば自分の胸の中に入るシルフィも今まで異常のダメージを受けるだろうし、何しろ自分がかわしたその攻撃魔法が、この街にどれだけの被害を与えるかを考えると、リュウガも下手に動けないでいた。なにしろ呪導機級の攻撃呪文である。どれだけの破壊力を秘めているか解ったものではない。
 しかし、リュウガが考えあぐねていたその時、突如として自体は急変した。
 唐突に呪導機の両肩の魔導器が大爆発を起こした。魔導器を動かす歯車やシリンダーが音を立てて地面に落下する。
 その光景を見て一番驚愕の表情を見せているのは中に乗る魔法剣士だ。
「……な、何者だ!?」
 この装甲に包まれた呪導機の肩に備えられた呪文発動用魔導器をいとも簡単に破壊するとは、相当な力を持った高位魔導士が、このどこかに潜んでいるに違いなかった。
「……!」
 本能的に強い魔力の力を感じた魔法剣士は、その方向に呪導機の頭部を向ける。
 建物の屋根の上だ。
 そこには目の前の大剣を携えた背の高いホビットと同じ格好をした、ホビットの少女が立っていた。
 二つの三つ編みと短いスカートが、風にひらひらと揺れている。
「ふう、わたしがちょっと遠くまでお使いに行ってた間に、ずいぶんと凄いことになってるのねぇ?」
 その台詞を表すように手には麻のバスケットを持っていた。
 リュウナが呪導機を迎撃した民家の屋根の上から、ぴょんっと飛びだした。そしてまるで本物の猫のようなしなやかな身のこなしを見せて地面に降り立つ。
 一応手でスカートの前の裾を押さえていたのだが、空いてるのが片手しか無かったので後ろからは下着が丸見えになってしまったのは御約束。今日は水色のストライプのショーツをはいていた。
 着地したリュウナの目の前には、ちょうど姉が先程投げ捨てた大剣の鞘があった。
 リュウナは投げ捨てられたままになっていた鋼鉄製の鞘を、カンッと軽く上に向かって蹴り上げた。
 くるくると宙を舞う鞘はしばらくすると重力に引かれて落下しはじめたが、そのままぱしっと手の中に収まった。
「よいしょっと」
 リュウナは自分の身長と同じぐらいの長さのある大きな鞘を持ちながらリュウガの元に近付いていった。しかし幾ら鞘と言っても鉄で作られた結構な重量物である。それをこの小さく華奢な体で軽々と扱ってしまうのだから、彼女は意外に凄い力持ちの女の子なのかも知れない。
 リュウナが姉に鋼鉄製の鞘を差し出す。
「はい、落し物ですヨ」
「はい?」
「それとこれもちょっと持っててね」
 素直に鞘を受け取る姉に、ついでに自分が持っていたバスケットも押し付ける
「?」
 手荷物を全てリュウガに渡したリュウナは、すたすたと今自分がその魔導器を破壊したばかりの呪導機に近付いていく。
 その操舞倉の中では騎乗する魔法剣士がリュウガが現れた時以上の驚きの表情を見せていた。
「……あ、あいつは『火竜遣い』!? ……何故、世界でも五指の指に入る高位魔導士までもがこんな辺境の地に現れる!?」
 魔法剣士がリュウナに付けられた仇名を口にする。
「!?」その時、乗騎の異変に気付いた。
 操縦桿が動かない。いや実際には動いているのだがその操縦桿の動きに機体が追従してこない。
 機体が射竦められていた。
 呪導機は龍機兵の魔法使いだ。他の種の機体よりも呪的要素がかなり多い機体構造をしているのは仕方が無い。機体に備えられた作り物の魔法使いとしての部分が、目の前に立つ超高位魔導士の放つ威圧感に反応しているのだ。
「……お、おのれ!!」
 それでも、魔法剣士は射竦められた機体を動かそうとした。
 自分の中にある魔法使いとしての気を最大限にまで高め、それを内部から呪導機に叩きつけた。
 呪導機が咆哮する。いや、それはあたかも苦しみに耐えかね絶叫しているような音だった。
 ギリギリと関節から嫌な軋み音を吐き出しながら呪導機がリュウナに迫ろうとする。機体の各所が負荷に耐えられなくなって白煙を上げ始めた。
 それでも呪導機が無理矢理体を動かそうとする。
「……」
 リュウナが相手を射竦める目に力を込めた。
 ガクン! と、呪導機の動きが再び止まる。
「……もう、良いのよ……あなたはわたしには勝てない……だから、もう、おとなしくしなさい……」
 リュウナが魔法剣士ではなく無理矢理操られる呪導機に優しく語りかける。
 その時何かが切断されるような音が、呪導機の中から聞こえて来た。それは機体の制御電脳が強引に動力線を切り離した音だ。
 勝手に自分の制御を離れだした機体の中、魔法剣士が声を上げる。
「……おのれ!!!」
 その頃リュウガはと言うと、自分の妹に見事に主役を取られた事に腹を立てるでもなく、自分の胸の辺りに手を伸ばして、結局そのまま気を失ってしまったシルフィの小さい肩を指で優しくさすってあげていたりなんかしていた。
 何時もののんびりとした表情に戻ったまま、呪導機相手に不敵に構える妹を頼もしげに見つめている。
 リュウナが危険になったと判断したら、胸の中で気を失うシルフィを地面に寝かせて置いて、一気に呪導機の前に飛び込むつもりだったが、どうやらその必要も無いようだ。
 魔法剣士は自分の制御を完全に離れた呪導機に見切りをつけた。
「くそったれが!!」操士席の上に付けられたごついレバーを力任せに引いた。
 突如として呪導機の頭部が爆発を起こした。それと共に呪導機本体がまばゆい光に包まれ始めた。
「!?」
 驚くリュウナの前で呪導機が強制的に発動された転移魔法により光の中に姿を消し始める。
 この機体にはそれ以上戦闘を続行出来ずに掴座しかかった時の緊急離脱用として、頭部の自爆と共に転移の呪文が発動する機構が組み込まれていた。この機構自体は機体の制御電脳からは完全に独立したシステムになっていた。
 光の中に没していく首の無くなった龍機兵のコクピットの中、魔法剣士が呟く。
「……紅蓮の死神……そして火龍遣い……地上最強の剣士と超高位魔導士が揃ってこの地に姿を現したと言う事は、帝国軍の奴等は我らの計画を掴んでいると言う事なのか……?」
 リュウナの目の前で呪導機が完全に転移して消えた。
 再び街の中が静かになった。
「……」
 リュウナの小さい肩に後ろから誰かが手を置いた。リュウナには自分の肩を優しく抱くその手の正体が自分の姉の物である事を、後ろに振り向かずとも解っていた。
 リュウガも考え深げに呪導機の消えた空を見つめている。
「……凄い引き際の良さだよね……わたし達が向かう先にはあんなに強い敵がいっぱいいるのかな?」
 リュウガは無言だった。
 そして先程から呪導機の消えた場所を見つめ、何かを考えるよな表情を見せていた。
「……あの、退き方……どこかで……」










 それから幾日か経ち、リュウガとリュウナがこの湖畔の宿場街に着いてからちょうど一週間が過ぎた。
 昨日のお昼頃に湖の港に船が来たと言う知らせが届いた。整備の為に一日程潰れるので、出港は基本的に翌日となる。
 まだ朝靄の残る時間のレストランの中、二人は既に旅に戻るための格好になっていた。リュウガは魔法使いを護衛する為の剣士として、リュウナは剣士を後ろから助ける魔導士として。
「……もう、言っちゃうのね……」
 女将さんが呟く。少し涙目だ。宿場街に店を構える関係上色んな別れを経験して来たはずだが、この二人との別れは相当特別のようだ。
「はい、お世話になりました」
 そんな女将さんを元気付けるように、リュウガが明るく返事をする。
 女将の隣に目を移すと娘のユーコが立っていた。もう松葉杖も取れ、今では普通に歩ける様になっていた。早速今日から働くつもりだ。もう既にウェイトレスの格好をしている。
 そのユーコが目から涙をぼろぼろと零していた。母親と違ってまだそれ程人生経験を積んでいない彼女は、女将ほど別れの悲しみには強くない。
「……ごめんね……別れに涙は禁物だって言うのにぃ……」
 ぐしぐしと拳で涙を拭うユーコ。
 たまりかねたリュウナがポケットからハンカチを取り出すと、大粒の涙を零すオーガの娘の瞳を優しく拭いた。
「……そんなに泣かないで下さいよ〜……わたしまで涙が出てきちゃうもん……」
 そう言いながらユーコの涙を拭っているリュウナの大きな目も、すこし涙ぐんでいた。
「それはそうとシルフィちゃん……本当にリュウガちゃんたちに付いていくの? ……あなたさえよければずっとここにいても良いのよ……?」
 オーガの女将が心配そうに妖精の女の子に声をかける。
 リュウガの肩の上にちょこんと座るシルフィが声をあげる。
「……うん、この街にいてもみんなに迷惑かけるだけだし……それに……」
 シルフィがリュウガの顔に小さい頭を向ける。
「どんな危険が待ってても、リュウガ達といっしょなら全然怖くないモン」
 リュウガが自分の顔の横から発せられたその台詞を聞いて、にこっと微笑んだ。
「……じゃあ、女将さん、ユーコさん、わたし達そろそろ出発します」
 そう言いながら肩にシルフィを載せたリュウガがテーブルに立てかけておいた愛用の大剣を取って腰に付けようかと思ったその時、バタン!! と、店のドアが勢いよく開かれた。
「?」
 その場にいた全員が入り口の方に振り向いた。
「たっだいまぁ〜ユーコ姉ぇが幻獣に襲われて怪我したって言うから、お休みもらってお見舞いにきたよぉ〜」
 そうやって元気よく入って来た者の正体を知る者は、この中に三人いた。
「ヨーコ!?」
 リュウガ、そして女将と娘のユーコが揃って声を上げる。
「あれ? リュウガ、こんなとこで何やってんの??」
 何処にいても目立つ長身の自分の艦長殿を他の誰かと見間違える訳が無いので、目の前に立つ童顔の剣士がリュウガである事にすぐに気付いたヨーコが、先に声をかける。
「そ、それはそうと、どうしてヨーコこそ此処に??」
 普段はのんびり屋さんなリュウガも流石にびっくりしたように返した。
「え? だってここ私のうちだもん」
「は!?」
 リュウガの後ろでは女将とユーコが、うんうんと首を縦に振っていた。





 リュウガとリュウナとシルフィの三人は、ヨーコに送られて湖の港まで来ていた。
 ヨーコはウェイトレスの制服に着替えていた。折角帰って来たのだから今日一日ぐらいは実家の仕事を手伝うつもりなのだ。
 ヨーコが着ているものは昨日までリュウガが来ていた物だ。元々はヨーコが着る為に女将が縫ったものなので、ヨーコが着た方がちゃんとしっくりきている。やはり五センチと言う身長差はかなり大きい。
「ふーん、そうなんだ、うちのおねぇが歩けない間リュウガ達が働いてくれてたんだ。でも、私の知り合いだって解ってれば普通に泊めてあげてたと思うのに、ゴメンネ」
「う、うん、ちゃんとお給料も頂いちゃいましたし、ヨーコのお母さんには随分とお世話になっちゃいましたよ」
「そう? ……そう、それとリュウガに妹がいるっていうのは聞いてたけど、あんなに小さくて可愛い子だとは思わなかったよ〜」
「エヘへヘ、ヨーコのお姉さんも綺麗な方じゃないですか〜」
 そんな風に会話を続ける後ろで、頭の上にシルフィを乗っけたリュウナが二人を楽しげに見つめていた。
「……ふーん、おねえちゃんにもあんなに楽しそうに会話できる友達がいるんだなぁ〜」
 シルフィがリュウナの顔の方に身を乗り出しながら口を開いて来た。
「ねえ、リュウナぁ?」
「ん? なにシルフィちゃん?」
「……あのさあ、ディフュ−ムのひと達って、あんなに大きな身体のひとが普通サイズのひとなの?」
 シルフィが不思議そうに聞いてきた。
 目の前を歩く二人は二人とも凄く長身の二人だ。そして女将とユーコもオーガの者だけあってそれなりの大きな背をしていた。
 ディフュ−ムの者達に逢ったのが殆ど初めてなシルフィにしてみれば、そう思うのも仕方が無い。
 リュウナは少し苦笑しながらその妖精の疑問に答えた。
「あはは♪多分違うと思うよ、でもわたし見たいなちびっこいのが普通って訳でも、ないけどネ」





 港に着くと一機の巨人飛行艇が翼を休めていた。全長七〇メートルにも及ぶ巨大な主翼には六基のエンジンがぶら下がっている。
 龍樹帝国軍が誇る「大型戦略輸送機 富嶽」だ。その巨大な胴体にフロートを履かせた水上機型の機体が目の前の湖の港に碇泊している。
 本来が最新鋭の軍用機なのでこの様な民間航路に使用されているという事態信じられないかもしれないが、元々この富嶽と言う機体は民間使用の輸送機としても転用できるように予めその様に設計されてるのである。これはその分生産量を増やしコストダウンを可能とした為だ。
 普段はこの航路は一機の富嶽によって支えられているのだが、今日は何故か二機の富嶽が碇泊していた。これは月に何本か出ている帝国府からの直通特別便だ。
 ヨーコはたまたま予定が合ったのでこれに飛び乗り、自分の田舎に遥々やって来たと言う訳だ。
 定期航路便の方の富嶽の乗降用タラップの前でリュウナが口を開いた
「……あの、おねえちゃん……その、おねえちゃんの指示があればおねえちゃんの艦って直ぐに動く事は出来るの……?」
「? ……どうしたんですかリュウナ? 突然そんな事聞いて……?」妹の意外な質問に不思議がるリュウガ。
 リュウナが自分の肩に座るシルフィの体を大事そうにさすりながら口を開いた。
「……わたし、シルフィちゃんが人間達に捕まりそうになったって聞いてからずっと気になってたの……もし、このシルフィちゃん以外に人間達に捕まった妖精達がいたらどうしようって……そして、この妖精の子たちの本当の存在理由をもし人間達が知っているのだとしたら……」
 リュウナが静かに口を開く。肩に座るシルフィもその意味が解っているのか少し身体をを硬くしている。
「人間達の考えを止めるためには、相当強い力が必要になる……多分それが出来るのはおねえちゃんの艦だけだと思うから……」
「……」
 妹のただらぬ雰囲気に、リュウガもちょっと考え深げだ。
「だ〜いじょうぶよ、リュウナちゃんっ」後ろに立っていたヨーコが沈んだ空気を晴らすように、明るく言う。
「あんたのお姉ちゃんの艦は無敵よ、今はまだ副長達が最終調整をしてるけど、これが終わればいつでも動ける様になる。あとはリュウガの指示があればどこへでも助けに行ってアゲル。信濃の主砲を撃ってる私が言うんだから間違いないワ」
 ヨーコが微笑みながら続ける。笑顔から覗くオーガ特有の長い犬歯が中々可愛いかった。
「だからリュウナちゃんは心配しないで自分が果たすべき事を一所懸命やりなさい」
 その台詞を聞いてリュウナも顔を明るくする。
「……そうでしたネ、心配かけてゴメンナサイ」
「ヨーコありがとう、それとゴメンネ」
 そう言いながらホビットの姉妹が揃って両の手の平を胸の前で、ぽんっ♪っと合わせる仕草を見せる。
 その凄まじく息の合った動きを見たヨーコが思いっきり噴出していた。
「あはははは、あんた達ってば顔も良く似てるけど、癖までまったく同じなのネ」


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