外伝4 龍樹帝国が出来た訳
海軍と言うものが出来たのは何時の事だろう?
元々この世界の海には「海龍 シーサーペント」と呼ばれる生き物が存在している。
それは「龍」に良く似た頭部を持つ、巨大な海蛇状の生き物である。
この「巨大」と言うのが問題であり、小さいものでも100m程あり、完全に成体となったものは1キロを超えてしまう大きさになるのである。
遥かなる昔より大海に挑む船乗り達は、この海の巨龍に悩まされていた。
このシーサーペントなのだが、通常は鯨種と同じように海の中のプランクトンを主な食料としている。
さらに本物の龍と同じように、その分厚い鱗から太陽光と水分を吸収する事により、植物と同じように栄養分を補給する事も可能である。
つまり普通は特に害を成さない温和な生き物なのであるが、何故か時折ひとの乗る船を襲うのである。
何故ひとの乗る船を襲うのかと言う事は、良く解かっていない。
縄張りに入った外敵を排除する為とも言われるし、普通は摂取出来ない栄養素を補給する為とも言われている。
だが、理由はどうあれ、船乗り達にとっては凄まじい脅威であるに違いない。
まだディフュームが、スクーナー等の帆船や手漕ぎのガレー船の時代で海に進出し始めた頃から、シーサーペントは大きな脅威となって海に立ちはだかっていた。
なにしろその全身を覆う鱗は「龍」と同じ位分厚く、当時の木造外洋船の武器と言えば衝角ぐらいしか存在せず、その程度の装備位ではシーサーペントに攻撃を食らったらひとたまりも無いのは当然であった。
その為、本格的に遠洋進出が出来る様になるには、船体全体を装甲版で固め、強力な蒸気エンジンを積んだ「甲鉄艦」の完成を待たねばならなかった。
攻撃方法としては相変わらず衝角による体当たりと、巨大な弩による射撃しか無かったのではあるが、この甲鉄艦の登場により100m〜300m級の通常サイズと呼ばれるシーサーペントには何とか対抗出来る様になった。
ちなみに龍樹帝国海軍の誇る大型戦艦「甲鐵級巡洋戦艦」に付けられている艦名は、シーサーペントを10体以上討ち倒した、この時代に活躍していたエース級の艦名を頂いているのである。
基本的には海軍と言うものは、このシーサーペントからの脅威から輸送船等を守る為に存在しているのだが、龍樹帝国が創設されたのは、少し違う理由からである。
龍樹帝国が出来た真の理由。
破壊神がこの大地に降り立った時、その身体から大量の死の灰が振り撒かれた。
そして大地は死の灰の充満した、生き物の生きてゆけぬ世界となってしまった。
当時の人間達は、まだ残されていた超科学により、自分たちの身体をこの死の灰の世界でも生きていけるだけの身体に、作り変える事を可能とした。伝承によれば、自分達の身体を構成する遺伝子を操作し、この荒廃した世界に適合させた言われる。
だが、この世界で生きて行くことを可能とした身体は世代を重ねるごとに血液が酸性を帯び始め、その血液を体内に維持する為に寿命自体も徐々に縮まり始め、破壊神の封印が解ける頃には、平均年齢は50歳前後となってしまっていた。
人間達は早い段階から三日月列島にある龍の世界樹が、この世界を浄化させる為の再生装置である事を知っていた。
そしてこの綺麗になりつつある世界に、今現在の人間達の身体では、生きていけない。
一切の死の灰を含まない純粋な水を、今の人間達は吸収できないのだ。
そして今の人間達の技術には、再び死の灰に満たされる前の時代の身体に戻す科学力は残されていない。
人間達が三日月列島に侵攻を始めたのは、自分達の種の寿命を減らす現況である、龍の世界樹を破壊する為だった。
龍の世界樹は破壊神を倒す為にこの世界の水を綺麗にしていることももちろん人間達は知っていたが、それよりも自分達の身を守る方が先決だった。
破壊神の処置に対しては。また別の方法を考えれば良いと人間達は判断していた。
龍樹帝国と言うものが出来たのも、この人間達の侵攻から龍の世界樹を守る為だった。